相場表

札幌中心部オフィスの市況及び相場  2016年3月


【空室率はさらに改善】

 2015年12月末時点の札幌ビジネスオフィス市況は空室面積78,595㎡(23,775坪)と、前年同月の空室率6.00%から1.01%減少し空室率4.99%と、昨年同様さらに改善されている。
2014年度、札幌三井JPビルディングが満室稼動で竣工し、その二次空室の影響も2015年にはほぼ解消された。2015年度の大規模ビルの新規供給は、明治安田生命札幌大通ビルの貸室面積5,792㎡(1,752坪)で、5年連続して1棟のみである。その好調の最大の要因は札幌大同生命ビルの建築計画による移転需要約6,612㎡(2,000坪)の移転が順調になされたことである。新規供給より移転需要が上回る以上に、新築ビルと既存ビルにうまく住み分けされたことにより空室率は減少。今後もその傾向は継続されるであろう。

【札幌ビジネス地区のテナントの動向】

 前述した建替えによる移転企業の他、空室率改善に寄与した業種は例年通りである。札幌市役所も様々な支援制度を設け、コールセンター・バックオフィス立地促進事業により積極的に誘致していることもあり、コールセンターを中心にアウトソーシング企業の増床・進出、バックオフィスとしてはアクサ生命保険、アメリカンファミリー生命保険が代表されるように大手企業の進出も見られた。その要因は、優秀な人材確保、ビル機能に比して賃料の安価さ、JR・札幌市営地下鉄・札幌駅前地下歩行空間に代表される優れた交通アクセス、低い自然災害リスクが挙げられる。もう一つ見逃せないのが大手建設会社、大手スポーツ用品メーカー等からも見られた自社物件から札幌ビジネス地区への移転の動きである。地区別で見ると札幌駅周辺地区以外の地区に入居しており、地区別の空室率の平均化に寄与している。
2016年も需要は例年通りの需要量があると予想されるため、2017年度春竣工予定の札幌フコク生命越山ビルまでは大型ビルの供給がないため、コールセンターを中心とした大型需要を取りこぼす懸念がある。

【札幌中心部の開発】

 2015年1月に明治安田生命札幌大通ビルが竣工した。予想通り2015年内にてほぼ100%の成約である。2015年度は安定した需要バランスにより、既存オーナーは新規需要を取り込めたことが空室率を見ても伺える。以後2015年2月から2016年度内の竣工物件は無く、その間は小休止状態に入る。
 今後の大型再開発を見てみると、南2西3丁目の(株)パルコと札幌信用金庫との共同ビルが「札幌ゼロゲート」として2016年2月にオープンする。北海道初進出の「フォーエバー21」が出店テナントと2015年春にプレス発表があり、地下2階、地上1階~4階の全フロアーに出店する。  その後同地区では「南2西3南西地区」再開発ビルが地下3階地上29階建てで、低層階の地下~地上6階は商業施設、7階以上の高層階は分譲マンションにて、計画練り直しの可能性はあるが具体化しつつある。
 北2西3では札幌フコク生命越山ビル(貸室面積1,079.50㎡[3,244坪])が2015年4月に着工、2017年春に竣工予定。2015年末時点にて既に入居を検討している大手金融企業やコールセンターも有り、手前のテナント誘致も順調に推移している模様である。
それと並行して札幌創世1.1.1区、北1西1地区も地上28階地下5階建、高機能ホール、放送局、最先端オフィスを骨格として、札幌の新しい知的空間の街づくりとして平成28年の完成を目処に着工している。
 その他、札幌駅北口周辺地区に立地する北8西1地区再開発事業も共同住宅、医療、福祉、商業施設を用途として着工を控えている。 また、札幌大同生命ビルは2016年度秋口までに企業の立退き移転がほぼ終了し、建替え計画に着手する。 空室の状況、再開発の動向によっては計画が予定されているビルの再開発計画が早まる可能性があると言えるであろう。

※調査対象データ
  対象地区:駅前通り、駅前通り周辺、札幌駅北口周辺、大通り周辺
  大通り南周辺、バスセンター駅周辺、西11丁目駅周辺、
  対象ビル:対象地区内の延床面積が330平方メートル(100坪)以上の主要オフィスビル。374棟。
  構造は、4階建以上の建物とし、空調及びエレベーター設備の整ったビル。

※表示
  ・文中単位は平米/坪換算併記
  ・各グラフに表記単位を掲示
  ・需要量、供給量は貸室面積換算
※ 調査対象地域 (114KB)
札幌中心部市況地図ガイド



札幌中心部オフィス 貸室面積と空室面積の推移 2015年12月

 2015年12月現在の空室面積は78,595㎡(23,775坪)、2014年度は105,398㎡(31,883坪)と26,803㎡(8,108坪)の減少となり、昨年同様さらに加速した。2011年以降、大型ビル供給が2015年度も明治安田生命札幌大通ビル貸室面積5,792㎡(1,752坪)の1棟と供給が抑制されており、新規需要が上回っているため空室面積が減少するのは当然の帰結である。既存物件オーナーも2014年度では札幌三井JPビルディングの影響を受けることへのリスクを避けるため、早めの誘致活動を活発化させていたが2015年度は通常の誘致活動にて新規需要を取り込めた。この傾向は新規供給が予定されていないため、道内景気が緩やかながら景気が上向きである以上、今後も空室は減少の方向へ向かうであろう。

 サブプライム問題で2008年度に金融危機が発生。需要と供給のバランスが崩れ不安定期に突入した。その影響を受けて2009年度は新規供給がゼロにも係らず、移転・進出が手控えられ需要が枯渇し、空室は増大した。2010年度は経済対策、景気状態によりデフレ傾向がより鮮明に顕在化した。オフィス市況もデフレの影響で経費削減を目的としたリストラ移転が見られ始め、新規供給が北洋大通センタービルと邦洋札幌N4・2ビルの12,450㎡(3,766坪)あるにも係らず、空室面積で見れば需要停滞からの脱却への光が見え始めた。2011年以降もその傾向は継続されている。2014年度は供給貸室面積1,582.566㎡(478,727坪)と2011年度並に戻したが、空室面積105,398㎡(31,883坪)と2013年度から比較すると25,865㎡(7,824坪)の大幅な減少、需要が勢いをつけた年であったが、2015年度はさらに加速し空室面積は78,595㎡(23,775坪)となり、逆に需要と供給のアンバランスさを懸念し始めた。

札幌市中心部 貸室面積と空室面積の推移
単位=坪(3.3㎡)


札幌中心部オフィス 地区別空室率の推移

 2015年12月現在、全体平均で4.99%の空室率となった。2008年度10.16%の状態から半分以下に下がったことになる。その流れを見ると、2008年度から2010年度までは金融危機に伴う景気後退のあおりを受け、冬の時代に突入。ようやく2011年度に10.63%と若干の上昇ではあるが歯止めがかかり、2012年度に10%を切った。この年が分岐点となり着実に改善され、2014年度が6%、2015年度が4.99%と完全に回復した。その要因は、2011年度から5年間、新規供給ビルが年間1棟だけの竣工。北海道経済の景気動向は下降を辿っているとの判断のもと、新規供給量を抑制したことが最大の要因であろう。さらに大型ビルの建替え計画により既在ビル解体による供給量の減少。それに伴って立ち退き移転が発生。2014年度にはさらに景気の好転を感じさせるIT企業、人材派遣会社、コールセンターを中心として、積極的移転や増床も見受けられた。2015年度もその傾向は継続されており、2016年には4%を切る空室率に改善されるであろう。

 札幌駅前通り地区は2015年において空室率が3.29%と2014年の4.00%から0.71%の減少。面積で言えば3,256㎡(985坪)。昨年に続き減少となった。札幌駅前通り周辺地区は3.97%と2.34%の減少。面積で言えば10,929㎡(3,306坪)の減少。両地区合わせて14,185㎡(4,291坪)の需要を吸収したことになる。2008年度は予想だにしなかったサブプライム問題に端を発した金融危機が起こり、空室が大幅に増加。2010年度まで増加傾向に歯止めはかからなかった。ようやく2011年度から供給量の抑制の影響、札幌駅前地下歩行空間の効果により、空室は減少の方向に向かった。2013年度は大手ビルで大型の面積を使用していたテナントが移転したことによる一過性の現象だが、2014年度は前述したとおり、IT関連企業、コールセンターの積極的移転及び増床に一番恩恵を受けた地区と言えるであろう。札幌三井JPビルディングによる二次空室も2015年度内に着実に改善されている。昨年予想した通り、札幌大同生命ビルの立退きによる移転企業は同2地区に吸収されており、同地区は今後も企業が望む筆頭の地区と言えるであろう。

 札幌駅北口周辺地区は空室率3.96%と2012年から連続して減少。札幌中心部ビジネス地区の優等生ぶりを2015年度も発揮した。2011年度だけ8.21%と増加したが、同地区の主な入居企業の業種であるIT関連企業の景気後退による業務不振が主な要因であった。しかし、それに代わるコールセンターの進出・増床等がカバーし、2012年度には札幌北ビル貸室面積18,380㎡(5,560坪)の大型供給も需要を吸収し、同地区の活性化を促した。その余波により2013年度は5%を切る安定した数値を示した。2014年度においても、大手IT企業の他地区への移転は予想通りあったが、鈍化するのではと思われたコールセンターの動きが予想に反し増床等により吸収され、2015年度もその傾向は変わっていない。

 他地区(大通り周辺地区、大通り南周辺地区、バスセンター駅周辺地区、西11丁目周辺地区)は2009年度をピークに各地区とも順調に改善されている。2015年度の各地区の平均をとると6.41%、2014年度は7.94%と1.53%減少し、昨年が1.13%の減少から比べても着実な改善から急坂に差しかかった様にも思える。特に大通り南周辺地区は郊外での自社物件からの移転が一番多かった地区で、その恩恵と地下歩行空間の効果もいまだに受けており、今後も下落傾向にて推移していくであろう。バスセンター駅周辺地区は昨年の大幅な下落もあり、下げ幅は一番小さかったが、元々小型の移転が主な地区なため、着実に地場企業を取り込んで今後も堅調に推移していくであろう。西11丁目駅周辺地区はビジネス地区の中で、唯一空室率が10%を越えた地区であるが、2012年度16.68%をピークに2015年度11.27%と同地区も着実に改善されている。この地区は弁護士事務所等の個人事務所が多いことが特徴であり、大きな変動がある業種ではないため、今まで大幅に減少することはなかったが、今後他地区の吸収されなかった企業の移転により2016年度においては10%を切る可能性もあると思われる。

(%)札幌市中心部 空室率の推移グラフ
単位=%
札幌市中心部 空室率の推移表



札幌中心部オフィス 募集賃料の推移 2015年12月

 2015年度の平均賃料は8,305円と2014年度の8,206円から99円の上昇にて終了した。2014年度の下落は札幌三井JPビルディングの竣工に備え、既存ビルが二次空室の影響を抑える柔軟な価格対応を行った結果であったが、2015年度前半にはその二次空室もほぼ吸収し目処が立ったため、2015年度後半には下落傾向から反転に転じた。人気の高い札幌駅前通り、札幌駅前通り周辺地区から既存入居テナントへの値上げ交渉が見え始め、他地区も追随する様相である。当然募集賃料も右肩上がりであり、実際の賃料交渉においても供給側が優位に立ち始めている。

 募集賃料を押し上げるのは新築物件であるため新築物件の動きを見ると、2008年度の3棟から下降線をたどり、2009年度は金融危機のあおりを受け竣工が0棟、2010年度北洋大通センタービル、2011年度日通札幌ビル、2012年度札幌北ビル、2013年度札幌大通西4ビル、2014年度札幌三井JPビルディング、2015年度明治安田生命札幌大通ビルと年1棟のペースにて供給されている。その棟数では既存ビルの賃料下落分をカバーするまでには至らなかったが、2014年から新築物件の入居率が順調なことに連動し、既存物件も空室解消の見通しが立ち、賃料下落から賃料の上昇傾向に転じた。2017年春まで新築物件の竣工が無いため、今後は水面下にて既存物件が逆転して賃料上昇への牽引力となっていくであろう。

札幌市中心部 オフィス賃料
単位=円/坪(3.3㎡)当たり


札幌中心部オフィス 地区別賃料の推移

 札幌駅前通り地区の2015年度における募集賃料は12,110円で157円の上昇。唯一の新築ビル明治安田生命札幌大通ビルが立地する地区であるためだが、それと比して札幌駅前通り周辺地区は117円の下落。7地区において唯一下落した地区である。その要因としては、新築ビルの立地が札幌駅前通り地区に集中して竣工し、隣接している同地区が一番の二次空室の影響を受けるため、募集賃料を抑制し空室の改善を優先させる柔軟な価格対応を行った事によると思われるが、今後は同地区も札幌駅前通り地区同様、下がる要素はない。2012年度から着実に空室率は減少し、需要が供給を上回ってきたことで、本来であればもう少し早めに募集賃料が上昇してもおかしくなかった状況であったが、日本経済のデフレスパイラルの波にのまれ脱しきれていなかった。だが今後はたがが外れて上昇に向かうことになるであろう。

 札幌駅北口周辺地区はIT関連企業、コールセンターのニーズを満たす比較的築年数の新しいビルが多いことから、札幌駅前通り周辺地区と同等の賃料水準を維持している。2012年度からは空室の改善により緩やかながら上昇に転じていたが、2014年度は大型のテナント移転が一部見られたこと、その余波にてテナント誘致を優先させるため募集賃料を見直したビルもあったことが要因であるが、2015年度では下げ気配は鳴りを潜め、上昇機運に転じた。2016年度はさらに賃料値上げの見直しを図るはずであり2009年度の9,854円までの賃料水準まで上昇するであろう。

 その他の地区(大通り周辺地区、大通り南周辺地区、バスセンター駅周辺地区、西11丁目駅周辺地区)は2015年度大型ビルの新築物件は無く、大幅に募集賃料が上昇する要素は無いが、札幌ビジネス地区全体の入居の好調さに引っ張られ下落に歯止めがかかり、大通り周辺地区あたりから微増ながら上昇した。2016年度も大型ビルの竣工予定は無いが、空室が改善されている以上、今後は右肩上がりで推移していくであろう。
札幌市中心部 地区別賃料の推移グラフ
単位=円/坪(3.3㎡)当たり
札幌市中心部 地区別賃料の推移表



札幌中心部オフィス 新規需要量 2015年12月
札幌市中心部オフィス 新規需要量
単位=㎡

 新規需要量とは貸室面積(供給面積)に対し、今年新たに新規のテナント需要量があったかの増減の数値である。2015年度で言えば2014年度から貸室面積が8,552㎡(2,587坪)の減少。空室面積は26,803㎡(8,108坪)の減少。貸室面積が減少した部分を差し引きし18,251㎡(5,521坪)が実際の新規需要量である。様々な要因により変化するがマイナスの数値であれば縮小、移転、撤退、倒産による景気後退の影響が明確に表れる。プラスの数値であれば景気回復による進出、増床、拡大移転などの動きがあったことが伺える。その点で言えば、2015年は可もなく不可もなしとも言えるであろう。

 2015年度を見ると新規需要量が18,251㎡(5,521坪)と2014年度程ではないが予想通りの結果で落ち着いた。新築物件の供給量が明治安田生命札幌大通ビルの5,795㎡(1,753坪)の1棟、新規需要量が新築物件の供給を上回り、既存ビルに流れたことが伺える。数年来の流れを見ると2008年度以降は金融危機での景気後退による企業の撤退、縮小移転、倒産などの動き。また、日本生命札幌ビル、8・3スクエア北ビルを中心とした大型ビルの竣工により2010年度までの3年間は供給量が上回った。2011年度にようやく冬の時代を抜け出し大幅なプラスに転じた。しかし2013年度はその反動により、大型需要が小休止状態に陥りマイナスに転じた。だが2013年度においての消費マインドの向上、政府の財政出動等による日本経済の景気回復の期待感が札幌ビジネス地区にも影響を与えだし、2013年度の反動もあり2014年度は堰を切ったように需要量増に繋がった。2015年度は前述したとおりである。2016年度も安定した新規需要が継続されると思われるが、逆に供給側が新規需要の希望に沿った商品でありうるか懸念される要素であり、新規需要が行き場を失うということが心配である。



※ 2016年3月25日 「2016年度札幌中心部オフィス市況」の発表にあたり、
             プレスリリースを発信いたしました。           →リリースページ


※ 「2016年度札幌中心部オフィス市況」をダウンロードしていただけます。
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